大学一年生の時にインドを貧乏旅行しました。それまで海外旅行の経験がほとんどなく、単身では初めての海外旅行でしたが、日本社会との大きな違いに衝撃を受けました。貧困の甚だしさと想像を超えた多様性は、今でも鮮明に思い出すことができます。当時と現在ではインドの社会も大きく変わりましたが、私にとっては研究を深めれば深めるほど興味の尽きない対象です。

　インド、そして南アジア諸国が独立後から抱える貧困と暴力の克服という課題は、インドの経済成長が注目を集める現在においても未だ解決されていません。私はこれまで、民主主義という政治制度・理念がこれらの課題にいかに取り組み、どのような成果を上げてきたのか、そして課題を克服することは可能なのかという点について、研究を続けてきました。いまだ答えは見つかっていません。グローバル化が進行する現在、貧困、格差、そして暴力の蔓延はより切実な課題として現代の世界に解決を迫っています。南アジア研究の立場から、これらの課題の解決に少しでも貢献できればと考えています。